介護保険サービスを拒むガンコな母をついに動かした魔法の言葉 

「絶対に介護なんて受けない」と言い張る母。そんな母をついに動かしたのは、意外にも“お金”にまつわる一言でした。

元気に一人暮らしを続ける母のこだわり

「絶対に他人の世話にだけはならない」と介護保険サービス利用を拒み続ける私の母…。

その日まで、母は元気に一人暮らし続けていました。市バスの敬老優待乗車券をフルに使いこなして、週に何度かは駅前に買い物に出かけ、月に一度の墓参りを欠かさず、たまの贅沢はデパートでのショッピングに友人とのランチ。

口ぐせは「誰にも邪魔されずに気ままに生活したい」で、自分の友人たちが徐々に施設で暮らすようになっても、「絶対に私は施設に行かない」と生活スタイルを変えません。

私たち家族も高齢の一人暮らしを心配してはいましたが、心身ともに元気な本人の意志を尊重していたのでした。

怪我をきっかけに訪れた転機

ところが、さすがに80歳を過ぎたころから足腰が衰えはじめ、とうとうある日、買い物の途中に階段でつまずいて顔を打ち、目のあたりに大きなアザをつくってしまいます。幸い骨折などの大けがには至りませんでしたが、数週間の間、青アザのある顔で過ごすことになってしまいました。

これは本人もかなりショックだったようで、気落ちからか体調まで崩してしまいます。

当時、私は実家まで徒歩約10分という距離に住まいを構えていましたが、フルタイム勤務の正社員だったので、「母親の世話と仕事の両立は絶対に無理」と判断。すぐに地域の包括支援センターに相談に駆け込んで、介護保険サービスの利用検討を開始しました。

ところが、せっかく私が段取りを進めているにもかかわらず、当の本人がサービス利用を頑なに拒みます。

「ヘルパーとはいえ、自宅に赤の他人が上がって来るなんてとんでもない!」

「年寄ばっかりのデイケアに連れていかれるなんて、絶対にイヤ!」

と激しく反論。私の話はもちろん、周囲のアドバイスにも耳を貸そうともしません。最後には、「うるさい」「放っておいて」と怒鳴られる始末です。

「せめて介護認定だけでも…」と私はあの手この手で母の説得を繰り返しました。

母を納得させた魔法の言葉

そして、ようやく本人が受け入れてくれた言葉、それがこれでした。

「これまで長年税金をたくさん納めてきたんだから、そのお金を少し返してもらうつもりで介護保険サービスを受けたら?」

この言葉を耳にした時、母の表情が明らかに変わりました。態度も急に軟化して、介護認定にも臨み、晴れてサービス利用を開始することができたのです。

私の母は「お金にうるさい」といわれる関西人。「この期に及んで損得勘定か…」と呆れつつも、態度を改めてくれたことに心から感謝したのでした。

今だから笑って話せますが、当時は恥ずかしくて誰にも言えなかった私の介護エピソードです。なお、母は現在89歳、要支援2ですが、介護保険サービスを利用しながら現在も元気に一人暮らしを続けています。

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