【最終回】働きながら向き合う親の介護 介護とともに歩むこれから~

こんにちは、新人ライターのmarcoです。母の認知症介護を通じて、私の人生は大きく変わりました。しかし、「そもそもなぜ母は認知症になったのか?もっと知りたい」そう強く思うようになりました。

そこで、より深く学ぶために通信教育で「認知症と生きる」という科目を受講。専門的な講義を通じて、単なる知識だけでなく、認知症と向き合うための視点を得ることができました。

今回は、その学びをもとに、家族を介護する立場として、「私たちに何ができるのか」。そして、「これから何をすべきか」をお伝えしたいと思います。

認知症を生きるのは、本人だけではない?

教科書の中で、「認知症を生きる当事者とは、診断を受けた本人だけではなく、その家族もまた、不安や葛藤の中で認知症を生きているのではないか」という問いかけに出会いました。その疑問は、私が母に寄り添いながら感じたこととまったく同じだったのです。
認知症は、本人にとっても家族にとっても悲しい現実です。本人が病を抱えていることはもちろんですが、その状態を目の当たりにし、支える家族もまた深い苦しみを抱えています。

認知症と向き合う中で、私が感じた問題の一つは、現行の介護制度の限界でした。現在の介護制度では、認知症の初期段階を「軽度認知機能障害(MCI)」と呼びますが、この段階では要介護認定を受けることが難しく、介護サービスを受けるためには自費で負担しなければなりません。例外的なケースはあるかもしれませんが、もし自立歩行が可能で、排泄や食事の介護を必要としない場合、幻覚や妄想により取り乱すことがあっても、制度上支援を受けることが難しいのです。

このような状況に直面し、私は腑に落ちないもやもやした気持ちを抱えながら、居宅介護に臨んでいた時期がありました。家族としてどんなにサポートしても、制度がそれを認めない現実に、心の中で何度も疑問を感じていました。

北欧福祉国家から学ぶ介護文化

そんな折、北欧の介護事情を学ぶ機会があり、日本との現状の違いを認識しました。
北欧の福祉国家では、社会保障制度が充実しており、医療費や教育費は基本的に無料ということはご存知の方も多いかと思います。

例えば、デンマークでは日本のような要介護認定の制度はありませんが、必要とする人が必要なときに無料で訪問介護を受けることができ、利用制限もないそうです。もちろん、こうした手厚い介護サービスを維持するためには、高い所得税や消費税を負担する必要があります。しかし、介護が文化として生活の中に根付いているという考え方は、認知症を生きる当事者にとって大きな安心材料となるのではないでしょうか。

一方、日本では、古くからの家制度の影響が現代の介護のあり方にも大きく関わっているように思います。「家族がなんとかしなければならない」という意識が根強く、結果として厳しい介護に追い込まれてしまう家族も少なくありません。社会全体で支え合う仕組みを考え、介護が個人や家庭だけの問題ではなく、社会全体で担うべきものとして機能する未来の必要性を感じました。

認知症を生きる当事者たちを追い込まないように!

前述のように、現在の日本の介護制度では、必要な支援を受けられないケースが多くあります。しかし、支援のあり方は制度に限らず、地域社会全体で支えていくことも重要ではないでしょうか。地域包括支援センターを中心に、地域共生の取り組みをさらに強化し、家族だけに負担が集中しない仕組みを作ることが求められます。
そのためには、身近に協力者がいることをもっと発信し、多くの人に知ってもらうことが大切です。地域のつながりや支援制度の存在を積極的にアピールし、必要な支援を必要な人に届けることで、救われる人は確実に増えるはずです。

認知症とともに生きる人、そしてその家族が孤立しない社会を目指して、私たちにできることを考えていきたいと思います。

まとめ

母の認知症介護を通じて、介護の現状や課題、そして今後について考えてきました。仕事との両立の難しさ、介護保険制度や地域ケアシステムのあり方など、実体験をもとに多くを学びました。そして、こうした経験を多くの方と共有し、より良い環境を作っていこうと思います。
6回にわたりお付き合いいただき、ありがとうございました。これからも介護と仕事の両立に向き合いながら、情報を発信していきたいと思います。

参照:
放送大学教材「認知症と生きる」公益社団法人全国老人保健施設協会
https://roushikyo-digital.com/archive_previous_pos/news-4081/

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