仕事の経験が介護の力に

介護に直面したとき、どんなことに気をつけ、どんな支えがあったのか。完全分離の二世帯住宅で認知症の父を介護しながら仕事も続けたかこさんにお話を伺いました。介護の現実をありのままに伝えつつ、その中で見つけた心の支えや工夫について紹介します。

かこ(50代) 非常勤勤務
家族(当時):夫・子2人との4人家族+両親の計6人
要介護者:実父(認知症/同居)、実母(脳梗塞の後遺症で右半身麻痺/同居)


家族の不安に寄り添う介護

私は、完全分離の二世帯住宅で、同居する父の介護をしていました。
父が認知症を発症する前は、両親の生活の大部分(8割ほど)を父が担い、残りを私と母で分担していました。父はまさに、日常の暮らしを支えてくれる存在だったのです。

ところが、父が認知症を発症してからは状況が一変。父は精神的な不安が強くなったようでした。そばにいれば安心してくれるようだったので、私は一日に何度も父のもとへ様子を見に行くようになったのです。

認知症の進行とともに身体の動きも鈍くなってきたため、散歩に付き添って足を動かすようにもしました。
しかし、すべてをひとりで対応するのは難しいので、日中はデイサービスを利用して、家でのケアの負担を少し減らしていました。

介護とはたらく、両立の難しさを感じつつ働き方を模索して

父の認知症が進むにつれ、出かける直前に父の体調が急に悪くなってしまい、やむを得ず仕事を休むことが何度かありました。また、出かける前に本人の了承を得て大丈夫だと判断しても、後から「具合が悪くなった」と連絡が入ることもありました。

そんなことが続くうちに、「このまま今の働き方を続けるのは難しい」と感じるように…。

仕事を辞めることも頭をよぎりましたが、できる限り両立を続けたくて、働く時間や業務量を見直すことにしました。仕事の分量を減らしたことで、介護とのバランスが少し取りやすくなったように思います。

仕事の経験が支えた、冷静に向き合う介護生活

仕事を続けながら介護をする上で、まず心がけたのは、あらかじめ職場に家庭の事情を伝えておくことです。
理解を得てから働けたことで、急な事態にもこちらの要望に応じて柔軟に対応してもらえ、本当に助かりました。

もちろん、家族にも現状をしっかり伝え、自分がいない時間は、それぞれが自分たちの生活を工夫して回すよう協力してもらいました。これも私の工夫の一つです。

また、私は介護の仕事をしていたので、職場で得た知識も実生活に活かせました。
たとえば、ペットボトルで作る簡易シャワーなど、市販の介護用品も家庭にある物で代用できるなどのちょっとした知識が、思いのほか役立ちました。
さらに、仕事で介護を経験していたことで、実父の介護にも少し冷静に、客観的な視点で向き合えたことが、自分の心の支えになっていたとも思います。

両立に悩む人へ伝えたいこと

介護と仕事を両立しようと考えているなら、まずは働き先の理解を得ることが大切です。職場に事情を伝え、協力をお願いすることで、急な変化にも柔軟に対応しやすくなります。

そして、「介護は自分一人で背負い込まない」ということも大切です。
これはよく聞くことですが、実際には「自分は背負っていないつもりでも、いつの間にか背負ってしまっていた」ということがあります。気づかないうちに周りが見えなくなり、精神的にも疲れてしまうことがあるのです。

だからこそ、一時的に施設に預けたり、訪問ヘルパーさんや外部の支援を積極的に利用したりすることも、とても大切です。
一人で過ごす高齢者の方にとっても、外部の方と話す時間は心の安らぎになります。家族でなくても、支えになる部分は意外と多いものですよ。

どうか遠慮せず、外の力を借りてみてくださいね。

合わせて読みたい

介護離職の前に知っておきたいこと——“辞める=終わり”ではない希望の選択肢
https://ryouritsu.c-mam.co.jp/archives/column/725

突然始まった父の介護――とまどいと、父との新しい関係
https://ryouritsu.c-mam.co.jp/archives/person/781

本人と一緒にデイサービスへ行こう!
https://ryouritsu.c-mam.co.jp/archives/goods/739