3人を介護して見えたもの


現在、次男と二人暮らしの久美子さんは、介護福祉士として働く一方、実母・年上の夫・障害のある次男の介護を担ってきました。
実母や夫が施設に入所するまで、在宅で介護をしながら仕事を続けてきた久美子さん。彼女が大切にしてきた思いや、支えとなった人々との関わりについて、お話を伺いました。

久美子(60代) 介護福祉士
家族: 障害を持つ次男と二人暮らし
要介護者:実母(別居)現在施設入所、 主人(同居)現在施設入所、 次男(現在も同居)


次男・母・夫、3人の介護を担って

私はこれまで、自閉症を持つ次男、ひとり暮らしの母、認知症の症状が出始めた年上の夫の在宅介護を経験してきています。

次男は、言葉でのやりとりが難しいながらも、運動機能に問題はなく、ある程度は自分のことができていました。けれど19歳のとき、突然、全身に不随意運動が出る原因不明の病にかかり、歩行も難しくなりました。1年の入院とリハビリを経て、不随意運動は残るものの、今では短い距離なら歩けるようになり、送迎付きで通所作業所に通っています。

母は元気にひとり暮らしをしていたので、私は仕事終わりに立ち寄るのを日課にしていました。とはいえ、当時は自閉症の次男のサポートもあり、思うように時間が取れず、ご近所の方々に母の様子を見に行っていただくこともたびたび…。地域の温かい支えには、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。

16歳年上の夫は、70歳を過ぎたころから少しずつ認知症のような症状が出てきました。最初は戸惑いながらも自宅で介護をしていましたが、私の余裕がなくなり、ついきつく当たってしまったことも…。
もっと穏やかに寄り添えたのではないかと、今でも思い返すたびに反省しています。

介護福祉士として働きながら向き合った家庭内介護

私は介護福祉士です。仕事として介護に携わって、もう20年以上経ちます。
それでも家庭内の介護においては、障害を持つ次男のサポートに追われ、母のことにも十分に手をかけられず、もどかしく感じることが多々ありました。

そんな中、主人に認知症の症状が現れ、一緒に次男の将来を考えてほしかった相手が支えを必要とする存在になってしまったことに悩み、苛立ちを覚えることもありました。
今思えば、その気持ちは、主人にも次男にも良い影響を与えなかったと分かるのですが、当時はどうしようもなかったのです。

そのような私でしたが、仕事をしている時間だけは、心を穏やかに保てる貴重なひとときでした。
今でもご利用者様との関わりは、私にとって癒しであり、宝物のような時間です。

あたたかな理解に支えられて続けた「介護とはたらく」

次男はもともと通所作業所に通っていたので、仕事のある私にとっては大きな助けとなっていました。また、次男が原因不明の病を患った時には、通所作業所の園長さんが通院に付き添ってくださったことも。その支えには、今でも本当に感謝しています。

主人の認知症や母の体調が悪化した時も、相談に乗ってくれた友人や包括支援センターの方々に、あたたかく寄り添い支えてもらいました。

また、職場では自分の状況を隠さず伝えたことで、勤務時間や仕事内容などに配慮してもらえました。そのような配慮のおかげで安心して働き続けられたことは、家庭での介護の大きな力になったと思っています。

仕事を続けることは、私にとって困難な状況でも前に進む力でした。
介護と仕事の両立は決して簡単ではありませんが、周囲の支えと理解があったからこそ、そして働いていたからこそ、私は歩みを止めずにいられたのだと確信しています。

一人で抱え込まず、勇気をもって助けを求めて

介護と仕事を両立しようとしている方へ、私からぜひお伝えしたいことがあります。

介護をしていると、身内を施設に預けることや、抱えている問題を周囲に知られるのが恥ずかしいと感じてしまうことがあるかもしれません。私も障害を持つ息子を授かった時、その現実を認めたくない気持ちが心のどこかにありました。

でも、思い切って自分の状況を隠さず相談してみると、解決の道が見えてきます。

私は、相談することで、それまで一人で抱え込んでいた悩みや辛さ、悲しみが少しずつ晴れていき、心から介護に向き合えるようになりました。この変化が、介護する側にもされる側にも良い影響をもたらしたのだと思いますし、その結果、安定した生活がより長く続いたのだと思います。

どうか一人で抱え込まず、勇気を出して思いを吐き出し、周囲の助けを借りてください。そうすれば、悲しみから解放されて笑顔で前に進めるはずです。
私も「もっと早く相談すればよかった」と心から感じました。
あなたの周りにも、きっと温かく理解してくれる人たちがたくさんいますよ。

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