介護に追われた私が、今“働く意味”に出会うまで

体調を崩してしまい、パートを退職。その後、約1年の療養を経て回復し、在宅ワークを開始した親の介護と仕事の両立に悩んだとき、ふと立ち止まってしまうことはありませんか。
介護に追われ、自分の人生を後回しにしてきた日々。そんな中でも、自分の働き方や生き方を見つけていった、しーおったーさんにお話を伺いました。「介護とはたらく」の両立がもたらす心の変化と、そこから得られたささやかな希望とは?

しーおったー(50代)自営業
家族: 父親のみ
要介護者:実母(同居)、母方の叔母(別居)、母方の祖母(別居)、半介護(実父)


誰かのため”が日常だった私──母を支え続けた一人娘の半生 

一人っ子だった私は、10代のころから病弱な母を支えるのが当たり前のような日々を送っていました。学生時代は学校帰りに買い物をして帰るのが日課で、社会人になってからは、母が関わっていた活動のために週3日は付き添いや送迎を。イベントがあれば、宿泊先や新幹線の手配、費用の支払いまで私が担当しました。

父も一緒に暮らしていましたが、料理はもう35年以上、ずっと私の役割です。それに、母の妹や母親、つまり私の叔母や祖母の介護にも定期的に出向いて、家事や送迎を手伝っていたので、何かと人の世話をする生活が続いていました。

そんな中、私が就職してすぐ、母が四十肩を患いました。美容師として長年働いてきたことが原因だったようです。そこからは、家事や身の回りの介助、病院への送り迎えなどが本格的に始まります。さらに追い討ちをかけるように、母は末期がんと診断されました。すでにステージ4で、余命は半年。そこからは自宅での介護が本格化し、抗がん剤の副作用を考えた食事や、脱毛でつらそうにしていた母のために、枕に当てるタオルを工夫したり、民間療法の情報を調べたりと、できることをひとつひとつ積み重ねていきました。

アロママッサージを受けたいという母の希望に応えるため、私自身も資格を取って施術できるようにしました。やがて母は歩くのも難しくなり、ポータブルトイレや様々な介護用品が必要に……。備品の手配から入院の準備まで、やらなくてはならないことがたくさんで、気を抜く余裕はありませんでした。

父はお金の管理や事務的な手続きをしてくれていましたが、介護の実務はほとんど私ひとり。大変ではありましたが、「家族だから、できることをするのは当たり前」と思っていました。振り返ってみても、介護づくしの半生だったと思います。

働くことも、介護も、母の想いも全部背負った。一人で抱えた「限界」の日々。 

母の体調がだんだん不安定になってきたことで、私は仕事に思い切り打ち込むというよりも、家庭を優先せざるを得ませんでした。どうしても会社でスキルを磨いてキャリアを積もうという気持ちにはなれなかったのです。
5年ほど仕事をしながら介護を続けましたが、職場の事業所移転を機に、退職を決意しました。職場へ通うのが難しくなったということもありますが、やはり両立が難しかったというのが本音です。

その頃の私は、体力的にも精神的にもかなりギリギリでした。毎日、長距離を走ったあとのような重たい疲れに襲われ、自分の部屋で布団に入ると、理由もなく涙があふれてくるのです。日中はなんとか動いていても、夜になると心が押しつぶされそうになっていました。
中でも一番つらかったのは、「実家じまい」をしていた時期です。母の介護、不動産関係の手続き、家のこと、そして仕事……全部をひとりで回していたので、時間も体力もまったく足りなくて、本当に追い詰められていました。子どもがもう手のかからない年齢だったのは救いでしたが、それでも私一人にのしかかる負担は相当なものでした。
母は他人に甘えるのが苦手で、何でも私に任せようとするタイプでした。その気持ちはよく分かっていたけれど、私の中では「もう無理かもしれない…」と感じる瞬間が何度もありました。今振り返っても、あの時期が心も体も一番きつかったと感じています。

誰かのためだけじゃない、自分のために働くということ──「介護とはたらく」両立がくれた気づき 

私の場合、思い切って仕事を辞めて介護に専念できたことは、結果的に良かった面もありました。今は父の介護を続けながらも、キャリアマムさんのおかげで在宅ワークに就けていて、時間の使い方にも余裕ができ、体力や気持ちの面でもずいぶん楽になっています。

思えば、母の介護をしていた頃に今のような在宅ワークに出会えていたら、あんなに長いブランクを空けずに済んだかもしれません。10年もの介護離職のあとに再就職するのは本当に大変で、「仕事に戻る」こと自体が遠い世界のように感じていました。

でも今、介護と仕事を両立できるようになって、「介護だけの自分」ではなく、「自分自身の人生」も少しずつ取り戻せている気がします。仕事をしている時間があることで、「私」という存在をちゃんと感じられるというか、前向きな気持ちが生まれてきました。

あの頃は、「なんで私が?」「今が一番働ける時期なのに…」と、毎日のように心の中で嘆いていました。まわりを見れば、みんな海外旅行に行ったり、留学したり、キャリアアップしていたり、結婚や出産といったライフイベントも楽しんでいて、正直すごく苦しかったです。

今でも「得られたものは何だったのか」と考えることはあります。
まだ確信はありませんが、在宅で働けるようになったこと、そして“苦労は人を成長させる”という意味の「艱難(かんなん)汝を玉にす」という言葉の重みを少しだけ実感できるようになったこと、それが、あの長い介護の時間を経て得られたものだったのかな?と考えています。

辞めなくても、やり方はある。介護と仕事の両立で大切にしたい“自分のペース” 

今は、多くの会社で介護をする人向けに休暇や時短勤務などの制度が整ってきています。うまく活用すれば、仕事を続けながら介護をすることも十分可能です。今の職場が「まあ悪くないな」と思えるなら、介護が落ち着くまでは無理に辞めず、そのまま続けるのも一つの方法だと思います。

仕事をしている時間は、介護のしんどさから少しだけ気持ちを離せる、貴重な時間です。職場の人と会話をするだけでも、気持ちが軽くなることがあります。もちろん、介護の話を無理にする必要はありません。ちょっとした日常のやりとりが心の支えになる、そんなこともあると思います。

さらに、もし今の働き方では難しいと感じるなら、在宅ワークに切り替えるのも選択肢の一つです。最近はスキマ時間でできる仕事も増えてきているので、自分の体力や生活に合った働き方を見つけやすくなっていると思いますよ!

大事なのは、「介護しながらでも働ける形」をあきらめないこと。それが、長く続く介護と向き合うための助けです。

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