介護にかかる費用はいくら? 費用の内訳と働き方の選択肢

介護が始まると、生活費に加えて「思いがけない出費」が増えることがあります。
被介護者の年金や貯金だけでは足りず、介護者が費用を負担するケースも少なくありません。
さらに、介護のために仕事を辞めたり、時短勤務にした場合、収入が減ってしまう可能性もあります。こうした出費の増加は、老後の資産形成にも影響を及ぼしかねません。
だからこそ、まずは「介護にかかるお金」を知ることが大切です。いざというときに慌てないよう、介護費用について学び、しっかり備えておきましょう。
【介護にかかる費用】在宅と施設、月額シミュレーション
介護には月々どのくらいの費用がかかるのでしょうか。在宅介護と施設介護、それぞれのケースにおいて、介護費用をシミュレーションしてみましょう。
1. 在宅介護の場合
在宅介護は、基本的には自宅で生活しながら、必要に応じて介護サービスを受けるスタイルです。
在宅介護で利用できる介護サービスには、デイサービス(通所介護)、訪問介護(ホームヘルプ)などがあります。
在宅介護の場合にはどのくらいの費用がかかるのかをシミュレーションしてみましょう。
【要介護3:デイサービスを月8回、訪問介護を月4回、民間の配食サービスを月10回利用する場合】
デイサービス1回1,000円、訪問介護1回2,000円、配食サービス1食500円、その他実費として介護用品費、医療費、食費がかかると仮定して計算します。
▼在宅介護の月額費用シミュレーション
具体例 | 費用(自己負担額) | |
公的サービス | デイサービス 訪問介護 | 8,000円(月8回利用) 2,000円(月4回利用) |
民間サービス | 配食サービス | 5,000円(月10食利用) |
実費 | 介護用品(おむつ・シーツ) 医療費 食費 | 1万円 7,000円 5万円 |
合計(1か月あたり) | 82,000円 |
※上記はあくまで一例です。サービス内容や地域、個人の状況によって実際の費用は異なります。
公的サービスにかかる費用は介護保険が適用されるため、支給限度額までであれば、1割(所得によっては2~3割)の自己負担で利用可能です。また、介護サービスは利用した量に応じて費用がかかります。デイサービスの回数を増やしたり、訪問介護を利用する時間が増えたりすると、それに伴い利用料も上がりますので注意しましょう。
配食サービスについては、民間配食業者以外にも、市区町村などの自治体でサービスを提供していたり、補助制度を設けていたりするところもあります。利用を検討している場合は、お住まいの自治体の制度を調べてみてください。
なお、生命保険文化センターによる「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」では、在宅介護にかかる費用の月額平均は5.2万円となっています。
2. 施設介護の場合
施設介護は、老人ホームなどの施設に入居して介護サービスを受けるスタイルです。
施設介護の場合、入居する施設の種類や立地、要介護度によって費用は大きく異なります。施設の種類ごとの月額費用目安については以下の表を参考にしてください。
なお、特に民間の介護施設では入居一時金や敷金などの初期費用が高額になりやすく、数十万~数百万円以上にのぼる場合もあります。
▼施設の種類ごとの月額費用目安
施設の種類 | 費用 | |
公的施設 | 特別養護老人ホーム | 約5~15万円 |
ケアハウス | 約7~13万円 | |
民間施設 | 介護付き有料老人ホーム | 約15~30万円 |
住宅型有料老人ホーム | 約10~30万円 | |
サービス付き高齢者向け住宅 | 約10~30万円 | |
グループホーム | 約8~20万円 |
※上記はあくまで一例です。サービス内容や地域、個人の状況によって実際の費用は異なります。
施設介護の場合にはどのくらいの費用がかかるのかをシミュレーションしてみましょう。
▼施設介護の月額費用シミュレーション
【要介護3:特別養護老人ホームに入居する場合】
費用(自己負担額) | |
介護サービス費(従来型個室) | 2万1,960円 |
食費 | 45,000円(30日分) |
居住費 | 3万5,130円 |
その他費用 | 1万円 |
合計(1か月あたり) | 11万2,090円 |
※上記はあくまで一例です。サービス内容や地域、個人の状況によって実際の費用は異なります。
施設介護で毎月かかる費用としては、介護サービス費、食費、居住費、その他日用品やレクリエーションのための費用などがあります。今回のシミュレーションでは月々11万2,090円になりましたが、施設やサービス内容によって金額は異なります。入居を検討している場合には、事前に事業所に費用について確認しておきましょう。
なお、生命保険文化センターによる「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」では、施設介護にかかる費用の月額平均は13.8万円となっています。
介護費用を試算してみよう!
介護にかかる費用はケースバイケースですが、厚生労働省では介護サービスの概算料金を試算できるシステムを公表しています。
「デイサービスに月8回行ったらいくらになるの?」
「要介護4で特別養護老人ホームに入居する場合の費用は?」
など、利用回数や要介護度に応じた試算が可能です。
介護の費用が気になったら、厚生労働省が提供する「介護サービス概算料金の試算」サービスでシミュレーションしてみましょう。
介護サービス概算料金の試算
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/?action_kouhyou_simulation_index=true
【見落とし注意】介護で発生する“隠れ出費”とは?

介護にかかる費用は、介護サービスや施設利用費用だけではありません。見落としがちな「隠れ出費」のせいで、思ったよりも支出が増えることも・・・。
介護で発生する「隠れ出費」について解説します。
自宅リフォーム費
歩行や階段の昇り降りが難しくなった場合には、手すりやスロープなど、段差を解消するための設備が必要です。住み慣れた自宅であっても、段差などでケガをしてしまう可能性もあります。場合によっては大幅なリフォームが必要になることもあるでしょう。
自宅リフォームの内容はさまざまあり、リフォームする場所や規模によって費用は大きく異なります。
▼自宅リフォーム費用の目安
費用 | |
段差の解消のためのスロープ設置 | 約2~45万円 |
手すりの設置 | 約1~15万円 |
和式便器から洋式便器への変更 | 約20~60万円 |
※上記はあくまで一例です。リフォームの規模や設置する製品、地域によって費用は変動します。
なお、条件に合えば介護保険による住宅改修のための補助金が受けられます。
介護に伴うリフォームを検討している場合は、事前にケアマネジャーなどに相談しましょう。
家電買い替え
介護を受ける方の状態によっては、介護ベッドや補聴器などの家電や機具が必要になります。介護用に部屋を設ける場合には、エアコンなどの空調設備の買い替えが必要な場合もあるでしょう。
▼家電買い替え費用の目安
費用 | |
介護ベッド | 購入する場合:約8~数十万円 レンタルする場合:月々約500~2,000円(介護保険適用の場合) |
補聴器 | 約10~30万円 |
エアコンの設置 | 約4~20万円 |
※上記はあくまで一例です。製品、地域によって費用は変動します。
介護者の健康管理費
介護を受ける方の費用にばかり意識が向きがちですが、介護する側の健康管理費も隠れ出費のひとつです。
介護は身体的にも負荷がかかるため、肩や腰を痛めてしまうことも。介護に伴う出費として、介護者の整体費用、通院費用も考慮しておきましょう。メンタル面の不調をきたした場合には、心療内科などでメンタルケアやカウンセリングを受けることもできます。無理せず介護をするためにも、介護者の心身のケアはとても重要です。
介護費用と向き合う、“自分らしい働き方”の選択肢
フルタイムで働いていた人が、介護のために自身の働き方を見直すケースは少なくありません。介護を理由に仕事を辞めたり、時短勤務や在宅ワークに切り替えたりする人もいるでしょう。離職や転職等によって収入の変化が避けられず、「介護の費用を考えると、収入面が不安」と感じる方も多いでしょう。
しかし、「働き方を柔軟に変える」という選択によって、自分に合った働き方で収入を確保し続けることは十分可能です。介護があるからといって、働くことをあきらめなくても大丈夫。介護にかける時間と仕事をするための時間のバランスを見極めながら、無理なく続けられる働き方を見つけることが、生活の安定にもつながります。
介護と無理なく両立できる働き方については、以下のリンク先でも紹介しています。介護を機に、自分らしく働くための方法を見つけてみてはいかがでしょうか。
介護と両立!スキマ時間でも働きやすい在宅ワーク5選
https://ryouritsu.c-mam.co.jp/archives/column/261
在宅ワークで無理なく安定収入!介護と両立する働き方のコツ
https://ryouritsu.c-mam.co.jp/archives/column/646
まとめ
介護にかかる費用は、本人にとっても家族にとっても負担が大きくなっているのが現実です。ただし、介護費用について知って備えておくことはできます。情報を得て、介護費用についてしっかりと考えておくことで、突然介護が必要になった場合でも、その知識や考えが助けになってくれるはずです。
近年では在宅ワークやテレワークの普及によって、離職せずに在宅で働きやすい環境が整ってきています。支出を抑えることに加え、少しでも収入を確保することで、生活の安定につながるでしょう。
介護は自分ひとりで抱え込まないことが大切です。公的な支援制度やサービスに加え、働き方の選択肢を上手に使って、無理せず自分らしく介護に向き合いましょう。