介護と両立できる仕事に就くために|家庭でも役立つ「介護系資格」

2025年、日本は人口の5人に1人が高齢者となる「超高齢化社会」に突入しました。家族が高齢になったことで、生活のサポートが必要になった方も多いのではないでしょうか。実際に、家族の介護をしながら働く人は増加傾向にあります。
介護と仕事の両立は簡単ではありませんが、「介護の知識」を身につけることで、心の負担が軽くなることもあるもの。介護の基礎や実践的なケア方法などを習得できる資格を取ることは、自宅での介護に役立つのはもちろん、将来的に介護職に就く場合にも知識や技術を活かすことができます。
今回の記事では、働きながらでも取得しやすく、家庭での介護にも役立つ「介護系職種の資格」をご紹介します。
資格と研修のちがいって?
例えば「介護職員初任者研修」であれば、130時間の研修を修了し、筆記試験に合格することで、資格を取得することが可能です。
介護系資格の取得を目指すなら、まずは入門的なレベルから始めて、スキルや経験に応じて上位の資格を目指しましょう。
介護系の資格には、国が認定する国家資格、地方自治体が発行する公的資格、企業などが独自に作成した民間資格など、さまざまなものがあり、難易度もそれぞれ異なります。
介護と両立しやすい「仕事に活かせる」資格

介護と両立して働く場合に活かせる仕事にはたくさんの種類があります。介護業界で働く場合はもちろん、自分の家族の介護でも身につけた知識や技術を活かすこともできるでしょう。
今回は代表的な介護系資格を紹介します。
身につけたいスキルや自身のレベルに合った資格からチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は、介護の入門資格に位置づけられます。旧ホームヘルパー2級に相当する資格で、在宅または施設で働く上で必要になる介護の基本的知識や技術を習得できます。訪問介護を行う場合に必要な資格のひとつでもあります。介護系の資格を取りたい場合には、まずは介護職員初任者研修を目指すと良いでしょう。
メリット
介護職員初任者研修のカリキュラムには、「介護におけるコミュニケーション技術」や「認知症の理解」、「老化の理解」などの科目があり、介護を基礎から学ぶことができます。また、受験資格は特に定められていません。年齢、学歴、実務経験を問わず、誰でも受講することができるのもメリットのひとつです。
活かせる働き方
介護初任者研修を取得すると、被介護者の身体に直接触れる「身体介護」に従事できるようになります。特に訪問介護で働く場合には、介護職員初任者研修の資格があると良いでしょう。
介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は、介護職員初任者研修の上位資格です。研修の受講によって、基本的な介護提供能力を身につけることができます。なお、介護福祉士試験を受ける場合には、介護福祉士実務者研修の取得が必須となっています。
メリット
介護福祉士実務者研修も受験資格は設けられていないため、誰でも受講することができます。ただし、スクールによっては介護職員初任者研修の取得が受講条件になっている場合もあるため注意しましょう。
介護福祉士実務者研修では医療的ケアの基礎を学べます。痰吸引や経管栄養についても学べるため、広く役立つ知識を得ることができるでしょう。
活かせる働き方
介護福祉士実務者研修には、利用者とケアマネジャー・ヘルパーをつないで調整する役割があります。また、同行援護・行動援護の介護事業者以外でサービス提供責任者(サ責)として働くことも可能です。
介護福祉士
介護福祉士は、介護職唯一の国家資格であり、取得すると介護のエキスパートとしての専門性が認められます。
受験資格は、3年以上の実務経験と介護福祉士実務者研修の修了、または介護福祉士養成施設に通い卒業することが条件。介護福祉士となると、身体介護や生活介護に加え、要介護者の家族への指導や助言、介護用具を使用する際の指導、介護現場におけるスタッフのマネジメントなど、リーダー的な役割が求められます。
メリット
国家資格である介護福祉士は、介護のプロフェッショナルとしての証明になります。就職や転職時にも、資格を保有していることが評価され、有利に働くでしょう。また、給料面での優遇を受けられるのもメリットです。
活かせる働き方
介護福祉士の資格を取得すると、ヘルパーとして働く以外にも、サービス提供責任者、生活相談員、介護施設におけるチームリーダーなど、選択できる業務の幅が広がります。認定介護福祉士、ケアマネジャーを目指すなど、さらなるスキルアップやキャリアアップを目指すのも良いでしょう。
福祉用具専門相談員
福祉用具専門相談員は、福祉用具の選定・活用・調整などに関する知識を身につけることができます。介護保険の指定を受けた福祉用具貸与・販売事業所において、2名以上の配置が義務付けられているため、介護用品の販売やレンタル事業では必須の資格と言えるでしょう。
50時間の福祉用具専門相談員指定講習を受講・修了し、筆記試験に合格することで資格を取得できます。
メリット
高齢化が進んでいることで福祉用具のニーズが高まっているため、介護用品の提案等を行う福祉用具専門相談員は安定的な需要がある職業です。仕事としてはもちろん、自宅介護の場面でも、車いす・ベッド・手すりなどを適切に選べるようになります。家族が福祉用具を使う際に適切なサポートができるため、介護される側の快適さや介護のしやすさにもつながるでしょう。
活かせる働き方
近年では専門の事業所以外にも、ホームセンターやリフォーム業者など、活躍できる場が広がっています。また、福祉用具の選び方や使い方のサポートをする上では、利用者や家族とのコミュニケーションが不可欠です。コミュニケーションを取るのが好きな方や得意な方は、特に向いている働き方と言えるでしょう。
認知症介護基礎研修
認知症介護基礎研修は、認知症に関する基礎的理解を深める公的資格です。介護初任者が主な受講対象で、認知症の方を支援するための知識や技術を身につけることができます。
2024年4月以降は、介護に直接携わる職員のうち所定の資格を持っていない人に対して、認知症介護基礎研修の受講が義務化されました。
基本はeラーニングで、半日から1日程度で修了できるカリキュラムです。実施状況は都道府県によって異なるため、受講を希望する際は、地域の実施機関で確認しましょう。
メリット
認知症介護基礎研修では、認知症の人への理解と対応方法の基本が学べます。認知症ケアの実践的な知識や留意点などを身につけることで、施設利用者のほか、認知症の家族との接し方や対応方法も知ることができます。認知症への理解を深めるためにも有効な資格です。
活かせる働き方
認知症介護基礎研修は取得が義務化されていることもあり、介護職員として働く上では必須の資格です。高齢化が進む中で、認知症ケアの需要は高まっています。介護を仕事にすることを考えているのであれば、ぜひ受講することをおすすめします。
たったひとつの知識が、心を軽くする
介護のやり方やコミュニケーション方法を知らないことが、介護する側の精神的な負担につながることも少なくありません。「なぜこんな行動をとるのか」「どうしてうまくいかないのか」がわからなければ、適切なケアができずに、介護する側もされる側もストレスを抱えてしまうでしょう。
介護では「知識」や「情報」が大きな支えになってくれます。例えば「正しい体の支え方」や「認知症の方への声掛けのコツ」を知っているだけで、介護をする上での不安を減らすことができるでしょう。介護系資格を取ることは、実用的な知恵を得る手段であり、暮らしの中での困りごとに備えるための武器にもなります。たったひとつの知識が、自分だけでなく家族の心も軽くしてくれるはずです。
まとめ

介護系資格は、職業としてはもちろん、家族の介護においても役立つ知識を学ぶことができます。自分や家族の「今とこれから」に合わせて、将来の選択肢を広げるための一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
資格の種類にはさまざまなものがあり、受験資格や受講スタイルもそれぞれ異なります。忙しい中でも、オンラインや通信制、短期講座を利用して取得可能な資格も多くありますので、無理のない範囲で資格取得に挑戦できるでしょう。