介護の不安を地域で乗り越える!自治体の介護サービスをフル活用しよう

家族に介護が必要になると、実際に何がどうなるのか、考えたことがありますか?
「足腰が弱り、ひとりでは歩けなくなった」、「食事や入浴に介助が必要になった」、「認知症の症状が出ており、ひとりで留守番させることが難しくなった」など、介護にはさまざまなケースがあります。段階的に介護が必要になる場合以外にも、急なケガや病気によって、突然介護をしなければならないこともあるでしょう。「介護のことを考えると不安でいっぱい」という方はたくさんいます。
しかし、介護はひとりで抱え込まなくても大丈夫です!
自治体や地域では、介護に関するさまざまな支援事業を行っています。身近な地域の支援を活用することで、介護の負担を減らすことができるでしょう。
この記事では、地域で利用できる介護サービスをご紹介します。
地域の支援は介護をする人の心強い味方。介護サービスをフル活用して、安心して介護に向き合いましょう!
地域の支援を活用しよう
家族に介護が必要になったとき、ひとりで抱え込んでしまうケースも少なくありません。しかし、介護は家族にとっても負担が大きいもの。一日のほとんどの時間を介護に費やさなければならなかったり、急な出来事に対応しなければならなかったりと、身体的・時間的に余裕がなくなるだけでなく、精神的にも大きなストレスを抱える場合も多いでしょう。
介護による負担が大きくなることで、介護する側が体調不良になってしまうこともあります。家族の介護をひとりで抱え込んだ結果、共倒れになってしまっては元も子もありません。
介護で大切なのは、「周囲の支援」を頼ること。そのひとつが、地域による介護サービスです。
介護サービスでは、介護に関するあらゆる相談に乗ってくれる相談サービスをはじめ、在宅介護で利用できるサービスや施設利用サービスなど、さまざまな支援サービスが利用できます。
誰かに頼ることは決して悪いことではありません。介護サービスは、介護する側もされる側も、安心して生活を送るための便利な手段のひとつです。地域の支援を上手に活用して、介護の負担を分散しましょう。
自治体が提供している主な介護支援サービス

自治体が提供しているサービスには、在宅で利用できるものから施設でケアを受けられるものまで、さまざまな種類があります。主な介護支援サービスを知って、必要なときに必要な介護を受けられるように準備しましょう。
相談・情報提供サービス
介護に関する相談や情報が欲しい場合には、相談・情報提供サービスが利用できます。相談・情報提供サービスは、介護が必要になったときや、介護に関するあらゆる相談に対して応じてくれる頼もしい存在です。介護に関する困りごとは、まずはこれらの窓口に相談すると良いでしょう。
地域包括支援センター
地域包括支援センターとは、介護・健康・福祉の総合相談窓口です。市町村が経営主体で、社会福祉士や保健師といった専門スタッフが配置され、地域住民を包括的に支援してくれます。
要介護認定を受けていなくても、高齢者とその家族であれば利用可能です。具体的な相談だけでなく、将来的な介護の相談や漠然とした不安に対する相談でも大丈夫。介護についての最初の相談窓口として利用できます。要介護認定を受けたい、介護サービスを初めて利用したいといった場合には、まずは地域包括支援センターに相談すると良いでしょう。
地域包括支援センターでは、主に以下の業務を担っています。
総合相談支援業務
住民からの相談を受けて介護サービスや医療サービスへとつなぐなど、横断的な支援を実施しています。「そろそろ介護が必要だが、どうしたら良いかわからない」、「家族の様子に気になる点がある」など、介護に関する相談がある場合に頼ることができます。
介護予防ケアマネジメント業務
要支援や要介護認定を受けた方や、要介護になる可能性がある方に対しての介護予防ケアプランの作成などを行っています。将来的に要介護状態になりそうな方に対して、認知症低下予防や口腔機能低下予防、栄養改善といった介護予防サービスにつなげる活動などをしています。
権利譲渡業務
成年後見人制度の活用サポート、虐待被害の対応や防止・早期発見などの業務を行っています。例えば、自分での金銭管理が難しくなった高齢者には、詐欺などから大切な財産を守るために成年後見人制度の活用をサポートするなど、高齢者が地域で安心して生活できるように支援しています。
包括的・継続的ケアマネジメント
ケアマネジャーへの指導や支援、難しい事例に対しての指導や助言などを実施しています。地域の医療・保健・介護分野の専門家など幅広いネットワークをつくり、その地域で暮らす高齢者の方の生活を支えます。
高齢者福祉の相談窓口
市区町村役場や福祉課でも、高齢者の生活や介護についての相談をすることができます。介護についての悩みや困りごとなど、幅広く相談を受けてくれるでしょう。介護サービスを利用したい場合には、地域内の介護サービス事業者の情報提供も受けられます。
相談窓口の名称は、福祉課、生活福祉課、高齢者福祉課など、地域によって異なっており、高齢者相談の専用窓口を設置している自治体もあります。どこに相談したら良いかわからない場合や、地域包括支援センターの所在などがわからない場合には、まずはお近くの市役所の相談窓口に問い合わせると良いでしょう。
在宅支援サービス
要介護状態になっても、できるだけ住み慣れた自宅で過ごしたいと考える方も多いでしょう。在宅介護を行う場合には、自宅に訪問して介護や看護をしてくれるサービスや福祉用具の貸し出しサービスなど、さまざまなサービスが利用できます。
訪問介護や訪問看護
訪問介護・訪問介護は、日常生活をサポートするために、自宅に訪問介護員や看護師などが訪問してケアをしてくれるサービスです。
訪問介護では、訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅に訪問して、食事、排せつ、入浴などの身体介護、掃除、洗濯、買い物などの生活援助、通院時の乗車・降車等介助などを行います。
訪問看護では、看護師などが自宅に訪問して、主治医の指示に基づいて療養上の世話や診療補助を行います。例えば、血圧や脈拍のチェック、在宅酸素やカテーテルの管理、リハビリテーションなどが受けられます。
福祉用具貸与・住宅改修
介護保険を利用して、福祉用具のレンタルや住宅改修費用の支給を受けることができます。
福祉用具とは、歩行器や特殊ベッド、車いすなど、日常生活を送るうえで必要な用具のこと。基本は元のレンタル料の1割の負担額で借りることができます。介護保険対象となる福祉用具のうち、要介護度によって保険給付対象となる用具は異なります。
住宅改修とは、家の中の段差をなくす、手すりを取り付けるなど、高齢者が自宅で暮らしやすくするための工事を対象に、基本1割の自己負担額で改修できる制度です。生涯20万円を限度に、費用の9割が支給されます。利用する際には事前の申請が必要です。
なお、介護保険を適用した場合の自己負担割合は基本1割ですが、所得によって2~3割負担となる場合もあります。サービスを利用する際には、事前に自己負担割合や利用条件を確認しておきましょう。
施設利用サービス
介護施設などの施設を利用したサービスにも、さまざまな種類があります。基本的に自宅で生活している方が利用できる介護施設でのサービスをご紹介します。
デイサービス・デイケア
デイサービスは「通所介護」、デイケアは「通所リハビリテーション」といい、どちらも施設に通って日中のケアを受けることができるサービスです。
デイサービスは、日帰りでデイサービスセンターなどの施設に通い、食事や入浴などのほか、レクリエーション活動や機能訓練などを受けられる介護サービスです。要介護1以上の方が対象のため、要支援1~2の方や自立の方は利用できません。
デイケアは、老人保健施設、病院、診療所などの通所リハビリテーション施設に通って、食事や入浴などの生活支援のほか、機能訓練、口腔機能向上サービスなどを日帰りで受けられます。デイケアは要介護1以上の方及び要支援1~2の方でも利用可能です。
日常生活の支援のみが必要で、要介護1以上であればデイサービス、リハビリや健康管理など医療的なケアが必要な場合はデイケアの利用が向いていると言えるでしょう。
ショートステイ
ショートステイは「短期入所生活介護」といい、介護が必要な方を施設で一時的に預かってくれる宿泊型の介護サービスです。なお、連続利用日数は30日までとなっています。病気や冠婚葬祭などで介護ができなくなったときや、介護する家族の身体的・精神的負担軽減のためにも利用できます。
利用料金は要介護度によって異なり、要介護度が上がるほど、自己負担額は高くなります。また、料金は施設や居室の種類などによっても異なるため、利用の際は事前に料金の確認を行いましょう。
見守り・緊急対応サービス
「高齢者ひとりで日常生活を送ることができているけれど、何かあったときにはどうしたら良いのかわからない」。そんな不安をサポートしてくれるのが、見守りや緊急対応サービスです。具体的にどのようなサービスがあるのか、代表的なものをご紹介します。
安否確認サービス
安否確認サービスは、高齢者の孤立防止を目的に、高齢者が住む自宅に電話や訪問をするサービスです。警備会社や郵便局などさまざまな事業者がサービスを展開しています。例えば、自宅にカメラやセンサーを設置して異変がないかを確認したり、定期的に訪問して様子のチェックや声かけを実施したりなど、高齢者がひとりでも安心して暮らせる見守りサービスを行っています。自治体によってさまざまな提携業者と連携しているので、お住まいの地域にはどのような安否確認サービスがあるか調べてみると良いでしょう。
緊急通報システム
緊急通報システムは、自宅に緊急通報機器を設置し、機器のボタンを押すと自治体が委託する事業者の自宅へ警備員などのスタッフが駆け付けます。また、急病などの場合は必要に応じて救助や救急車の手配も行ってくれます。急病や急に発作が起きた際にも、ボタンひとつですぐに対応してくれる心強いサービスです。自治体によって利用条件が異なり、無料で利用できる場合もあります。
認知症への対応
認知症は、身体機能は問題なくても目が離せなかったり、徘徊や問題行動を起こしたりと、家族が対応に悩んでしまうケースも多いもの。地域の支援の中には、認知症の方の介護に役立つサービスもたくさんあります。介護サービスを利用して、少しでも介護の悩みや負担を減らしましょう。
認知症サポートプログラム
認知症サポートプログラムとして、各地域で認知症カフェや専門相談員の派遣事業が行われています。
認知症カフェとは、地域に住む認知症の方やその家族が気軽に過ごせる集いの場であり、認知症の方や家族同士がコミュニケーションをとったり情報交換をしたりすることができます。また、医療や介護の専門家に相談できる場としても活用できます。各地で開催されているので、近くの認知症カフェを探してみてはいかがでしょうか。
介護相談員の派遣事業では、市町村に登録された介護相談員が介護サービス事業所や施設に訪問して、問題の改善やサービスの質向上につなげています。サービス利用者と事業者の橋渡し役として、適正なサービスが受けられるように取り組んでいます。
認知症高齢者グループホーム
グループホームは「認知症対応型共同生活介護」ともいい、認知症の方を対象にした、専門的なケアを提供する地域密着型のサービスです。施設では5~9名の少人数ユニットで、利用者と介護スタッフが共同生活を送ります。共同生活では家事分担などを行い、ともに生活する方とのコミュニケーションを通して自立した生活を目指します。
なお、認知症高齢者グループホームの利用は、要支援2以上の人で、医師から認知症の診断を受けた方が対象です。
東京都の事例

東京都で実施されている具体的な介護サービスをご紹介します。こちらで挙げたもの以外にも、全国の地域ごとにさまざまな介護サービスがあります。お住まいの地域ではどのようなサービスがあるのか、ぜひ一度調べてみてください。
「シルバーパス」
シルバーパスは、東京都支援のもと、一般社団法人東京バス協会が実施している事業です。寝たきりの方を除き、満70歳以上の都民の方は、都内の民営バス、都営交通、八丈町営バス、三宅村営バスに乗り放題となる「東京都シルバーパス」を購入できます。
2024年10月1日に購入した場合、2025年9月30日期限のシルバーパスを、住民税非課税の方は1,000円で購入可能。都営バスや地下鉄を利用する際にお得な制度です。移動することが多い都内在住の高齢者の方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
世田谷区の「あんしんすこやかセンター(地域包括支援センター)」
世田谷区では、地域包括センターを「あんしんすこやかセンター」と称して、身近な福祉の相談窓口としています。世田谷区内28ヵ所に設置されており、高齢者の方はもちろん、障がいのある方や子育て中の方からの相談も受け付けています。窓口では社会福祉士、主任ケアマネジャー、保健師などの専門家が相談に応じてくれます。生活の悩みを気軽に相談できる場として利用できます。
板橋区の「ひとり暮らし高齢者見守りネットワーク」
板橋区では、ひとり暮らしの高齢者を地域ぐるみで見守り支える制度として、「ひとり暮らし高齢者見守りネットワーク」の取り組みを行っています。利用を希望すると、ひとり暮らし高齢者見守り対象者名簿に登録され、警察や消防など区の関係機関で情報を共有。緊急時の対応などに活用されます。また、登録された人には、緊急連絡先や地域の協力機関名が掲載された緊急カードが配られます。
文京区の「ハートフルネットワーク」
文京区では、高齢者が住み慣れた地域で生き生きと暮らすことを目的に、地域で支え合うネットワークとして「ハートフルネットワーク」を行っています。ハートフルネットワークとは、「高齢者あんしん相談センター」(地域包括支援センター)を中心に、関係協力機関が高齢者に声掛けなどを行い、必要に応じてセンターに連絡を取ることで、速やかな対応につなげる取り組みです。
ハートフルネットワークの協力機関としては、町会、民生委員、介護相談協力薬局などの団体協力機関、地蔵通り商店街振興組合、新聞販売店、配食事業者、牛乳販売店など、配達や検診等で高齢者の自宅に訪問する事業者らの民間協力団体、警察署、消防署、医師・歯科医師会などの公共協力機関など多岐に渡ります。
中央区の「緊急通報システム」
「緊急通報システム」は、自宅に緊急通報機器を設置して、24時間365日体制で通報サービスを提供するものです。利用者には本体機器と緊急ペンダントが配布されます。
緊急時に本体機器または緊急ペンダントの緊急ボタンを押すと、区が委託する事業者の受信センターへと通報され、警備会社のスタッフなどが駆け付けるシステムです。必要に応じて救助要請も行われ、ケガや急病の際には警備会社の現場派遣員と消防が救助活動を行います。また、相談ボタンを押すと、受信センターで健康に関する相談にも対応してもらえます。希望者には、火災センサーや見守りセンサーも設置可能です。
対象となるのは、基本的には65歳以上のひとり暮らしまたは高齢者のみの世帯。固定電話回線型式の本体機器の場合、非課税世帯なら無料で利用が可能です。
なお、緊急通報システムは中央区をはじめ、都内及び全国でも多くの自治体で提供しているサービスです。利用条件や料金、サービス内容は各自治体で異なります。
まとめ
東京都をはじめ全国の自治体や地域では、さまざまな介護支援サービスが利用できます。「在宅での介護を頼みたい」、「緊急時に素早く対応してほしい」、「認知症の介護について相談したい」、「日頃の様子を定期的に見てほしい」など、介護が必要な場面はそれぞれ異なります。必要なサービスを必要なときに利用することで、介護する家族の負担も軽くすることができるでしょう。
介護はひとりで抱え込まないことがポイントです。地域支援によって得られる知識やサポートは、介護生活を前向きにする鍵となります。まずは、介護サービスや支援の情報を得ることが安心への第一歩。地域支援の情報を知り活用することで、少しずつ介護への不安を解消しましょう。